令和7年度 下期 法規 問12
高圧CVケーブルの絶縁耐力試験における充電電流と補償リアクトルの台数

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和7年度 下期 第三種電気主任技術者試験 法規科目 問題(問題文・選択肢は改変せず、公開PDFの該当ページをそのまま掲載しています)
解説
**(a) 充電電流**
まず試験電圧を決める。解釈第15条により、最大使用電圧7 000 V以下の電路の絶縁耐力試験電圧は**最大使用電圧の1.5倍**(交流で行う場合)。
試験電圧 V = 6 900 × 1.5 = 10 350 V
次に静電容量。1 km当たり0.45 μFで長さ800 m(0.8 km)なので C = 0.45 × 0.8 = 0.36 μF = 0.36×10⁻⁶ F
充電電流は Ic = 2πfCV = 2π × 50 × 0.36×10⁻⁶ × 10 350 ≈ 1.17 A
したがって正解は(2)。
**(b) 補償リアクトルの台数**
試験用変圧器の容量が5 kV·A、二次電圧が11 000 Vなので、変圧器が供給できる電流は I_T = 5 000 / 11 000 ≈ 0.455 A
充電電流1.17 Aのうち0.455 Aしか変圧器から出せないので、残りをリアクトルで打ち消す必要がある。
補償すべき電流 = 1.17 − 0.455 ≈ 0.716 A
補償リアクトル1台の電流容量が270 mA = 0.27 Aなので 0.716 / 0.27 ≈ 2.65 → **3台**
したがって正解は(3)。
補償リアクトルが必要になる理屈は、ケーブルが大きなコンデンサだから。試験電圧をかけると進み位相の充電電流が流れ、これが試験用変圧器の容量を食いつぶす。そこで並列にリアクトル(遅れ電流)を入れて打ち消し、変圧器から見た電流を小さくする。**並列共振を使って電源の負担を減らす**、という考え方そのもの。
台数は必ず切り上げる。2.65台という半端な数は作れず、2台では容量が足りない。
選択肢ごとの理由
- (1)(a)0.78 は試験電圧を最大使用電圧のまま(1.5倍にせず)計算した場合に近い値。
- (2)正しい。(a) 試験電圧10 350 V、C = 0.36 μFで Ic ≈ 1.17 A。
- (3)(a)1.46 は長さを1 kmとして計算した場合の値。ケーブル長は800 m。
- (4)(a)2.34 は試験電圧を3倍相当にした場合の値。7 000 V以下は1.5倍。
- (5)(a)3.51 は係数を取り違えた場合の値。まず1.5倍の試験電圧を確定させる。
この論点は、データセンターの現場でこう出てくる
絶縁耐力試験は、データセンターの受変電設備を新設・増設したときに必ず通る関門で、電気主任技術者が立ち会う試験の代表格。 この問題が示しているのは、**ケーブルが長いほど試験が大掛かりになる**ということ。DCは建物が大きく、受電室から各フロアの高圧盤まで高圧ケーブルが長く伸びる。充電電流は長さに比例するので、試験用変圧器だけでは容量が足りず、補償リアクトルを何台も持ち込むことになる。試験機材の手配と搬入経路の確保が、そのまま工程上の制約になる。 実務では、この負担を避けるために**直流での試験**が選ばれることもある。直流なら充電電流は流れないので機材が小さくて済む。ただし解釈では、交流で行う場合の試験電圧に対して直流はその2倍の電圧とすることが定められており、ケーブルの種類によっては直流試験が劣化を進めるという議論もある。どちらを選ぶかは、設備の状況と施工者・所有者の合意で決まる。 もう一つDC特有の難しさが、**増設時に既設を止められない**こと。新しく引いたケーブルだけを切り離して試験する必要があり、そのための開閉器や接続点の位置を設計段階で決めておかないと、後から試験できない構成になってしまう。「将来どう試験するか」を初期設計に織り込むのは、運用を知っている人間にしかできない仕事になる。
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