令和7年度 上期 電力 問9
架空送電線路から通信線路への誘導障害(静電誘導と電磁誘導)

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和7年度 上期 第三種電気主任技術者試験 電力科目 問題(問題文・選択肢は改変せず、公開PDFの該当ページをそのまま掲載しています)
解説
誘導障害を2つに分ける問題。**原因が電圧か電流か**で名前が決まる。
**① 電圧が原因のもの=静電誘導障害** 送電線と通信線の間には静電容量がある。送電線に電圧がかかっていれば、電流が流れていなくても、この静電容量を通じて通信線に電圧が現れる。よって(ア)は**静電誘導**。
**② 電流が原因のもの=電磁誘導障害** 送電線に電流が流れると磁束ができ、それが通信線と鎖交して起電力を生む。このとき2つの線路を結んでいるのは**相互インダクタンス**なので(イ)はこれ。現象の名前である(ウ)は**電磁誘導**。 「誘導リアクタンス」は1つの回路の中のωLを指す言葉で、2つの回路を結びつける量ではない。ここを取り違えると(イ)で落とす。
**平常時に0Vになる理由** 三相が平衡していて、かつ十分にねん架されていれば、3つの相から受ける誘導の**(エ)ベクトルの和**がゼロになる。各相の大きさは同じで位相が120°ずつずれているため、足し合わせると打ち消し合う。「大きさの和」や「大きさの差」ではなく、位相を含めたベクトルとして足すのがポイント。
**不平衡になる事故** (オ)は**1線地絡**。三相のうち1相だけが地絡すると、その相にだけ大きな地絡電流が流れて三相のバランスが崩れ、打ち消しが効かなくなる。三相短絡は3相が同時に短絡する対称的な事故なので、大電流にはなっても三相の対称性は保たれ、誘導は打ち消され続ける。ここが選択肢を分ける。
(ア)静電誘導、(イ)相互インダクタンス、(ウ)電磁誘導、(エ)ベクトルの和、(オ)1線地絡。正解は(3)。
選択肢ごとの理由
- (1)(ア)を磁気誘導としているが、電圧が原因なのは静電誘導。(イ)の誘導リアクタンスは2回路を結ぶ量ではなく、(エ)も「大きさの差」ではなくベクトルの和。
- (2)(イ)が自己インダクタンス。自己インダクタンスは自分自身の回路に対する量で、別の線路へ誘導を伝えるのは相互インダクタンス。(エ)も誤り。
- (3)正しい。電圧→静電誘導、電流→相互インダクタンスを介した電磁誘導、平常時はベクトル和が0、不平衡を生むのは1線地絡。
- (4)(ウ)の「電荷誘導」という用語はない。(オ)の三相短絡は対称事故なので三相のバランスは崩れず、誘導障害の主因にはならない。
- (5)(ア)(イ)(ウ)がいずれも誤り。また(エ)は「ベクトルの差」ではなく和。三相の誘導を足し合わせると0になる。
この論点は、データセンターの現場でこう出てくる
誘導障害はデータセンターの中でも日常的に起きている。相手が送電線と通信線ではなく、電力ケーブルとLANケーブルになるだけである。 **電圧が原因の静電誘導**にあたるのが、電源ケーブルとの容量結合。これはケーブル間の距離を取るか、金属のセパレータやシールドを間に入れると減る。 **電流が原因の電磁誘導**にあたるのが、電流の作る磁界がLANケーブルに乗ってくるもの。こちらは距離を取ることに加え、**平行して長く走らせない**(やむを得ず交差させるときは直角にする)のが効く。 この2つの区別が分かっていると、対策の選び方が変わる。ノイズが乗っているときに「シールドを足す」だけでは、電磁誘導側には効きにくい。配線ルートそのものを見直すほうが早いことがある。 「三相が平衡していれば打ち消される」という性質も、そのまま使える。電源ケーブルは3本(または3本+中性線)を**同じ管路・同じトレイにまとめて通す**のが原則で、相ごとにバラバラのルートを通すと打ち消しが効かず、周囲に磁界をまき散らす。さらに、金属管に1相だけ通すと管に渦電流が流れて発熱する。「まとめて通す」は施工の作法として知られているが、その根拠はこの問題の(エ)そのものである。 そして1線地絡が不平衡を生むという点は、漏電の検出に使われている。零相変流器(ZCT)は3相の電流のベクトル和を測っていて、平常時は0、地絡が起きたときだけ値が出る。漏電遮断器が働く仕組みは、この問題が説明している現象の裏返しである。
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