令和7年度 上期 電力 問16
三相短絡電流と、そのときの母線電圧(変圧器と線路のインピーダンスを二次側に換算する)

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和7年度 上期 第三種電気主任技術者試験 電力科目 問題(問題文・選択肢は改変せず、公開PDFの該当ページをそのまま掲載しています)
解説
**インピーダンスをどちらの電圧側にそろえるか**を最初に決めるのが要。ここでは短絡が起きた二次側(22kV)にそろえる。
**(a) 短絡電流**
*手順1:変圧器のインピーダンスを二次側に換算する。* 一次66kV、二次22kVなので変圧比は 66/22 = 3。インピーダンスは変圧比の2乗で換算するので、二次側に落とすと 1/3² = **1/9倍**。
R = 0.05 / 9 = 0.00556 Ω X = 7 / 9 = 0.7778 Ω
*手順2:線路のインピーダンスを出す。* (0.20 + j0.45) Ω/km × 0.5 km = **0.10 + j0.225 Ω** これは元から22kV側の値なので換算は不要。
*手順3:足して大きさを出す。* R合計 = 0.00556 + 0.10 = 0.1056 Ω X合計 = 0.7778 + 0.225 = 1.0028 Ω |Z| = √(0.1056² + 1.0028²) = √(0.01114 + 1.00557) = √1.0167 = **1.0083 Ω**
*手順4:相電圧を割る。* Y結線なので1相分に加わるのは相電圧。 E = 22 000 / √3 = 12 702 V I = 12 702 / 1.0083 = 12 597 A ≒ **12.6 kA**
(a)の正解は(3)。
**(b) 短絡時の母線電圧**
短絡点は母線から500m先なので、母線には「線路インピーダンスに短絡電流が流れたぶんの電圧」が残る。
|Z線路| = √(0.10² + 0.225²) = √(0.01 + 0.050625) = √0.060625 = **0.2462 Ω**
母線の相電圧 = 12 597 × 0.2462 = 3 102 V 線間電圧に直す = 3 102 × √3 = 5 372 V ≒ **5.37 kV**
(b)の正解は(3)。
落とし穴は3つ。①変圧器のインピーダンスを換算せずにそのまま足す ②線間電圧22kVをそのまま割って相電圧を使い忘れる ③(b)で相電圧のまま答えて √3 を掛け忘れる。**√3 を2回(割るときと掛けるとき)使う**ことを意識しておきたい。
選択肢ごとの理由
- (1)(a)の21.8kAは変圧器のインピーダンスを小さく見積もった場合に近い。1/9への換算は行うが、無視はできない。
- (2)(a)の10.5kA、(b)の2.72kVはいずれも合わない。相電圧12 702Vを合成インピーダンス1.0083Ωで割る。
- (3)正しい。(a) 12 702 ÷ 1.0083 ≒ 12.6 kA。(b) 12 597 × 0.2462 × √3 ≒ 5.37 kV。
- (4)(a)の6.5kAは、線間電圧22kVをそのまま使うなどインピーダンスを2倍近く見積もった場合。(b)の1.34kVも同様。
- (5)(a)の17.3kAは、相電圧ではなく線間電圧を割った場合に近い(22 000÷1.0083÷√3 との取り違え)。Y結線の1相分は相電圧。
この論点は、データセンターの現場でこう出てくる
短絡電流の計算は、データセンターの受変電設備で**遮断器の遮断容量を決める**ために必ず行う。試験問題がそのまま設計計算になる、数少ない分野である。 遮断器には「何kAまで安全に切れるか」という定格遮断電流がある。実際に流れうる短絡電流がこれを超えていると、事故時に遮断器が切れずに壊れ、アークが飛び散る。保護装置が保護されていない、という最悪の状態になる。高圧受電設備の場合、電力会社から提示される受電点の短絡容量(%インピーダンス)をもとに、自家用設備側の短絡電流を計算して機器を選ぶ。 実務で見落としやすいのが、この問題の構造と同じ**「距離が伸びると短絡電流は小さくなる」**という点である。受電点に近いほど短絡電流は大きく、ケーブルを伸ばすほどインピーダンスが増えて小さくなる。だから遮断器は受電点に近いものほど高い遮断容量が要る。逆に、末端のブレーカで短絡電流が小さくなりすぎると、今度は保護装置が動作しない(動作するまで時間がかかる)という別の問題が出る。上流と下流で選択遮動が成立するかを確かめるのは、この電流の大小関係を追う作業である。 (b)の「短絡時に母線電圧がどこまで下がるか」も現場では重要で、これは**電圧ディップ**の問題になる。5.37kVということは、22kVの母線が24%まで落ちるということ。この瞬間、同じ母線につながっている他の設備も電圧低下を受ける。データセンターではUPSがこれを吸収するので情報機器は止まらないが、空調機のモータや制御電源は落ちうる。UPSを入れているのに空調が止まってサーバが熱で落ちる、というのは実際に起きるパターンで、**どこまでをUPSで守るか**の設計はこの計算から始まる。
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