令和7年度 上期 電力 問12

たるみと実長(支持点間を変えたときの電線の実長を求める)

電力A問題配点 5点
令和7年度 上期 電力 問12 の問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和7年度 上期 第三種電気主任技術者試験 電力科目 問題(問題文・選択肢は改変せず、公開PDFの該当ページをそのまま掲載しています)

解説

使う式は2つだけ。順番に代入する。

**たるみ** D = WS²/(8T)  **実長** L = S + 8D²/(3S) (W:単位長さあたりの重量、S:径間、T:水平張力)

**手順1:新しいたるみを出す。** 問題文は「単位長さあたりの重量が同じ電線」「同じ水平方向の引張強さ」と言っているので、W と T は共通。するとたるみは D ∝ S² だけで決まる。

D' = 3.0 × (240/200)² = 3.0 × 1.2² = 3.0 × 1.44 = **4.32 m**

ここで「たるみも1.2倍」としてしまうと 3.6m になって外す。**径間の比の2乗**で効く。

**手順2:実長を出す。** L = S + 8D²/(3S) = 240 + 8 × 4.32² / (3 × 240) = 240 + 8 × 18.6624 / 720 = 240 + 149.2992 / 720 = 240 + 0.20736 = **240.207 m**

もっとも近いのは240.21。正解は(4)。

計算そのものより、桁を落とさないことのほうが難しい問題である。選択肢が240.04から240.25まで小数第2位で並んでいるので、4.32² の 18.66 と、割る数 720 を丁寧に扱う。

なお、実長が径間より伸びる量はわずか20cmで、240mに対して0.09%にすぎない。たるみが4m以上あっても、線の長さ自体はほとんど変わらない——この感覚を持っておくと、答えが240.2前後に来ることを先に見積もれる。

選択肢ごとの理由

  • (1)240.04 は、たるみを元の3.0mのままで実長を計算した場合に近い(240 + 8×9/720 = 240.10)。径間を変えたらたるみも変わる。
  • (2)240.05 も、たるみの変化を見落とした場合の値の並び。まず D' = 3.0×(240/200)² を出す。
  • (3)240.14 は、たるみを1.2倍(3.6m)としてしまった場合の値(240 + 8×12.96/720 = 240.144)。たるみは径間の2乗に比例する。
  • (4)正しい。D' = 3.0×1.44 = 4.32m、L = 240 + 8×4.32²/(3×240) = 240.21m。
  • (5)240.25 は 8D²/(3S) の分母や係数を取り違えた場合。実長の式の係数は 8/3 で、分母に S が入る。

この論点は、データセンターの現場でこう出てくる

たるみの式そのものはデータセンターの中では使わないが、**「長さが温度と張力で変わる」という前提**は、構内のケーブル敷設でそのまま効いてくる。 電力ケーブルは通電すると発熱し、導体温度が上がって伸びる。ケーブルラック上に一直線にぴんと張って固定してしまうと、伸び縮みの逃げ場がなくなり、固定金具の部分に応力が集中してシースが傷む。だから**スネーク配線**(わざと蛇行させて敷設する)で余長を持たせる。架空電線にたるみを持たせるのと同じ理屈で、温度変化ぶんの伸縮を形で吸収している。 垂直に立ち上げる区間ではさらに注意が要る。高層の建屋でケーブルを縦に通すと、ケーブル自身の重量が下端の固定部に全部かかる。一定間隔で支持金具を入れて重量を分散させるのは、鉄塔が径間ごとに電線を支えているのと同じ考え方である。 もうひとつ、この問題が教えている**「2乗で効く量を1乗と間違えない」**という注意は、設備計算のいたるところに出てくる。ケーブルの電圧降下は電流に比例するが、線路損失は電流の2乗に比例する。負荷が2倍になれば電圧降下は2倍だが、損失は4倍になる。ラックの増設で電流が増えたとき、電圧降下の計算だけして損失(=発熱)を見落とすと、ケーブルの許容温度を超える。径間を1.2倍にしたらたるみは1.44倍、という感覚は、そのまま設備の余裕度の感覚につながっている。

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