令和7年度 上期 法規 問12
第5調波電流の発生量と、配電系統への流出量(分流計算)


出典:一般財団法人 電気技術者試験センター 令和7年度 上期 第三種電気主任技術者試験 法規科目 問題(問題文・選択肢は改変せず、公開PDFの該当ページをそのまま掲載しています)
解説
高調波の定番問題。**電流源から見た分流**として解く。
**(a) 発生する第5調波電流**
*手順1:負荷設備の定格電流を出す。* 三相なので
In = 500 × 10³ / (√3 × 6 600) = 500 000 / 11 431.5 = **43.74 A**
*手順2:その15%を取る。* 問題文は「発生する第5調波電流は、負荷設備の定格電流に対し15%とする」と言っているので
I₅ = 43.74 × 0.15 = **6.56 A**
もっとも近いのは6.6。正解は(2)。
「受電点電圧に換算した電流」という言い回しに身構えるが、負荷設備は6 600Vで受電しているので、そのままの値でよい。
**(b) 配電系統へ流出する第5調波電流**
等価回路は、高調波電流源に対して**配電系統側**と**コンデンサ設備**が並列にぶら下がっている形。発生した6.56Aが、この2つに分かれて流れる。
*手順1:第5調波(n = 5)に対する2つのインピーダンスを出す。*
配電系統側:j6 × n = j6 × 5 = **j30 [%]**
コンデンサ設備:j50 × (6n − 100/n) = j50 × (6×5 − 100/5) = j50 × (30 − 20) = j50 × 10 = **j500 [%]**
*手順2:分流の比を取る。*
並列回路では、電流は**インピーダンスの逆比**で分かれる。配電系統側へ流れる分は
I系統 = I₅ × Zコンデンサ / (Zコンデンサ + Z系統) = 6.56 × 500 / (500 + 30) = 6.56 × 0.9434 = **6.19 A**
もっとも近いのは6.2。正解は(2)。
**この結果が意味すること**を押さえておきたい。コンデンサ側のインピーダンス(500%)が系統側(30%)よりはるかに大きいので、**高調波電流のほとんど(94%)が系統へ流れ出てしまう**。コンデンサはほとんど吸ってくれていない。
これは6%直列リアクトルを入れた場合の設計どおりの挙動である。もし直列リアクトルが無ければ、コンデンサ設備のインピーダンスは j50 × (−100/n) = −j1 000 と**容量性**になり、系統側の誘導性 j30 と打ち消し合って**共振**を起こす。そうなると高調波電流が異常に増幅され、コンデンサが焼損する。
**6%という数字は、第5調波で確実に誘導性になるように選ばれている**。第5調波の共振を避ける下限が約4%で、余裕を見て6%が標準になった。この問題の j50 × (6n − 100/n) という式の「6」がその6%である。
選択肢ごとの理由
- (1)(a)1.3Aは定格電流の計算で√3を二重に使った場合などに近い。In = 500×10³/(√3×6 600) = 43.7A。
- (2)(a)(b)とも正しい。(a) 43.74×0.15 = 6.56A。(b) 6.56×500/(500+30) = 6.19A。
- (3)(a)11.4A、(b)10.8Aとも過大。定格電流43.7Aの15%が発生量。
- (4)(a)32.8Aは定格電流の75%を取った場合などに近い。15%である。
- (5)(a)43.7Aは定格電流そのもの。15%を掛け忘れている。
この論点は、データセンターの現場でこう出てくる
高調波は、データセンターの電気設備でもっとも実害が出やすい問題である。この問題の負荷設備が出す15%という値も、データセンターでは**もっと大きくなりうる**。 理由は負荷の中身にある。サーバの電源、UPS、LED照明、インバータ——**データセンターの負荷はほぼ全部がスイッチング電源**で、第5調波・第7調波を出す。一般のオフィスビルより高調波の含有率が高い施設と考えてよい。 **起きる障害** - **進相コンデンサの過熱・焼損**:高調波電流が流れ込んで発熱する。データセンターで進相コンデンサが数年で壊れるなら、まず高調波を疑う - **変圧器の過熱**:高調波は表皮効果で実効抵抗を上げ、鉄損も増やす。定格の範囲で使っているのに温度が高い、という症状になる - **中性線の過熱**:第3調波(3の倍数次)は三相が同相で重なるため、中性線で足し算になる(法規問9で扱った収容率の話ともつながる) - **保護継電器の誤動作** **対策の順番** **① 6%直列リアクトルを必ず入れる。** 解説で触れたとおり、これが無いと共振して被害が拡大する。「コンデンサだけ買って後からリアクトルを付ける」ができない構造なので、発注時に確認する。 **② 系統への流出量を計算する。** この問題の(b)がまさにそれで、高圧受電の需要家には**高調波抑制対策ガイドライン**により、契約電力1kWあたりの流出電流の上限が定められている(6.6kV系で第5調波3.5mA/kW など)。超えるならアクティブフィルタの設置を検討する。 **③ 実測する。** 計算は等価回路の仮定に依存する。竣工後に受電点で高調波電流を実測し、ガイドラインの上限と比べる。 この問題で「コンデンサがほとんど吸わず、94%が系統へ出ていく」と分かったことは重要である。**進相コンデンサは力率改善のための設備であって、高調波を吸うための設備ではない**。高調波を減らしたければ、別の手段(アクティブフィルタ、多パルス整流、リアクトルの増強)が要る。
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